2023年の暮れに、それまで勤めていた会社を辞めたことは先のブログに書いた。
60歳の定年を前にして辞めたのは、仕事に対する閉塞感もあったが、何よりこれから先の職業人生に曖昧な不安を抱いたからだ。
生涯現役で、世の中の役に立ちたいとココロでは思いながらも、具体的なプランもなく給料取りの立場に甘んじる日々。刻々と歳は重なっていく。どこかで跳ばねばならないというあせりがあった。
辞めた後の基本的なプランは「専門性」をつけることとした。保有しているキャリアコンサルタントの資格をベースに、人の就業に関わる仕事で独立しようと考えた。
キャリコンの資格取得は30数年前。キャリアカウンセラー資格の黎明期に、仕事の延長線上で取得したが、今までの職業人生では、そのスキルや知識を使うことはあっても、その道の「専門家」ではなかった。
まずは、戦略として専門家と名乗れるだけの実績を積もうと、ハローワークや東京都の就業支援事業、民間の専門機関と手当たり次第に応募したが、即戦力の経験者を取りたい行政からはことごとく敬遠された。ようやく行政から業務の委託を受ける民間の人材サービス会社から内定をもらったのは、活動を始めて1か月をまわったころだった。
そんな綱渡りの就職活動の中、25年前、かつて人事コンサルで机を並べて働いていた元同僚の友人から、お前のキャリアは面白い、今の勤務先(同僚も転職をしている)の人事部長に見せてやるからレジュメを出せと言われ、面白半分に提出した。
そこから、とんとん。2回の面接を経て内定をいただいた。
仕事は、内部通報の受付担当者。前職での経験を買っていただいたようだ。
従業員の苦情、悩み、訴えは、組織の課題を把握するための大事な声。前職でも窓口で丁寧に対応した事が、上司の意識・行動変化となり、組織の雰囲気が改善された経験があった。従業員の話に耳を傾け組織課題を解決することは、キャリアコンサルティングのスキルを高め、専門的な経験が積めると考え、人材サービス会社を辞退し、友人の勤務先のオファーを受けることにした。
その会社は、グループ全体で23,000人の従業員を擁するプライム企業だ。
入社して就いた仕事は通報窓口ではなく、グループ全体のコンプライアンス促進を企画する仕事になったが、59歳でプライム企業に勤めることになるとは夢にも思っていなかった。プランドハプスタンスどころではない。すべては友人の勤務先での信用力に他ならない。
少子高齢化が進行し働き手が減少する中、企業は人材募集に苦労している。人材募集に王道はないが、社員からの紹介(いわゆるリファラル採用)は、確かな人材を募集する一つの手段である。
自分の勤務先に、自分の知人を紹介するということは、大きく二つの心理的なハードルがある。ひとつは、自分の勤務する会社に「この人を紹介しても大丈夫か」というハードル。つまり紹介者が、勤務先で期待するだけのパフォーマンスが発揮できるか。勤務先にマイナスの影響を与えはしないかという不安である。自分の勤務先での信用を落とすことにもなりかねない。もう一つは、自分の友人を「この会社に紹介しても大丈夫か」というハードル。勤務先に対する信頼関係がなければ、大事な友人を紹介するわけにはいかない。
今回、面接の場面で入社にあたって何か不安はありますか。との問いに対して、私が一つだけあると断って伝えたのは、紹介者の顔に泥は塗れない。ということである。
自分が確かな人材かどうかは、今後の自分の働きぶり次第だが、紹介してくれた友人の顔に泥を塗らぬよう、感謝の気持ちをもって精進していこう。
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